ゲストさん [ログイン]
安全門で読む 【安全門で読む】 思春期という時限爆弾 2. 思春期・初期―「自分はふつう?」

2. 思春期・初期―「自分はふつう?」 [印刷用 タイトルあり] [タイトルなし]

本サイトでは、ヘルスケアを中心に皆様に大いに役立つ本を著作者の許可を得て順次公開しています。本サイトの内容は全て著作者の財産であり、著作権法によって保護されています。いかなる場合でも本内容の複製、変更、転載、頒布を禁じます。
書籍名 思春期という時限爆弾
見出し 2. 思春期・初期―「自分はふつう?」

内容

  1. 2. 思春期・初期―「自分はふつう?」
    1. 性徴期の体の変化
    2. 性徴にともなう心の変化
    3. とりあつかい注意
    4. 体の変化が早まっているのはなぜ?
    5. 体と心の変化の意味合い
    6. 女の子の体と心の変化
    7. 男の子の体と心の変化
    8. 思春期初期の子どもがぶつかるハードル
    9. 今、考え中なんだから……
    10. 喪失感と不安感に悩む
    11. 中学校生活を始める
    12. 思春期初期の子どもをサポートする
    13. 子どもの話を聞いていますか?
    14. 思春期初期を切りぬけるヒント
  2. クランチ・タイム 学校ぎらい

2. 思春期・初期―「自分はふつう?」

変化のはげしいこの時期、子どもは自分の気分や感情をなかなかコントロールできません。


思春期初期に直面する大きな疑問は、「自分はふつう?」。子どもにとって、この答えさがしは大問題です。

思春期初期は、性徴期を迎え、体にいろいろな変化があらわれる時期です。子どもがバスルームに鍵をかけて何時間もこもるのはよくあること。自分の体を隅々まで、体毛一本、でっぱりひとつまでチェックしているのです。鏡の前に立ちつくしていることもあるでしょう。ただし、鏡に映った姿に本人が喜んでいるのか、ショックを受けているのかは見きわめにくいところ。子どもの体と心の変化は、驚くべきスピードで進んでいます。そんな子どもたちが心の底から望んでいるのは、友だちと同じであること、「ふつう」でいることです。

最近の子どもは小学校で詳しい性教育を受け、さらにほとんどの場合、中学でも保健体育、生物などの授業で性教育を受けます。授業で教えるのは、性徴期の体と心の変化、性交、妊娠、避妊について。そうした大切なことがらには、親も関わってください。親子いっしょに参加できる勉強会などが開かれています。この時期には、子どもがおとなになりつつあることに気づいているという姿勢を示しつつ、子どもを気づかい心配している姿を見せましょう。


あのすごいにおいは?

先週、うちの息子ったら制汗剤を見つけたの。参ったわよ!家中、あのにおい。ものすごかったんだから。バスルームの息子のとこに駆けつけて言ってやったの。「ねえ、そんなにつけないでいいのよ。脇の下だけよ!」。ドアを閉めたら、ちょうど夫がやってきたから言ったの。「かわいいじゃない。あの子ったら『だいすきだよ、ママ』ですって」。そしたら夫がわたしを見て、「アリス、あの子は『うぜえんだよ、ママ!』って言ったんだよ」。ふたりで大笑いしたわ。ちっちゃかったあの子もおとなになりかけてるのね。

アリス―十一歳の男の子の母


性徴期の体の変化

体の成長は、思春期に入る直前にスローダウンします。嵐の前の静けさです。それが思春期に入ると、乳児期を別にすれば人生でいちばん激変します。「発育のスパート」期には、心臓の大きさも一気に二倍になります。親のほうは、うちの子には温かいハートなんてない!、と思うものですが……。身長が一年間に十センチ伸びる子もいます。学校から戻っておやつに食パン一斤、チキン一羽分を平らげる子も珍しくありません。

思春期の体の成長は、九歳と早く始まる子もいれば、十五、六歳とゆっくり始まる子もいます。性腺刺激ホルモン(ゴナドトロビン)、性腺ステロイド、副腎アンドロゲンという三種類のホルモン分泌量が急激に増えます。ホルモンの名をあげられても、親も子も頭が痛くなるだけかもしれませんね。ホルモンの働きで性器が発達し、性徴が始まるのです。

最近の研究によると、八歳までに初潮が始まる女の子は、二十五年前には百人に一人だったのに対し、最近は六人に一人になっているといいます。初潮が早発すると、月経がきっかけでうつ病になる子もいます。思春期うつ病については、第九章を参照してください。


性徴にともなう心の変化

体の変化は目に見えますが、心の変化のほうは複雑で、親にとって体より手こずる問題です。思春期初期の子どもの心は先が読めません。ある日は落ち着いていておとなっぽく見えます。かと思うと、翌日は突如としてひどく移り気になったり、涙もろくなったり、怒りっぽくなったり、子どもじみたふるまいをしたり。変化のはげしいこの時期、子どもは自分の気分や感情をなかなかコントロールできません。気分を左右するホルモンや体が激変していることを考えれば、無理もないことです。


早くもブランド好き

十歳の息子が「シックス・パック」がほしいと言いだしました。六本パックの酒のことかと思って、驚いて息子の顔を見て言ったんです。「ルパート、ビールを飲むにはまだ若すぎるだろ」。憤慨した息子ににらまれましたよ。「ちがうよ、パパ。筋肉のことだよ」。そう言って、息子が指さしたのは完璧な筋肉をもつ若い男を特集した健康雑誌でした。このやりとりで気づいたんですが、十歳の頃、わたしは自分の腹筋が六つに割れているかや、履いている靴や着ているTシャツがはやりのブランドかなんて考えませんでした。ところが今どきの子どもは大違いで、うちの十歳の息子のように、着る物にはんぱじゃないこだわりを見せます。そのことをマーケティング担当者は知っていて、子どもをターゲットに欲求をあおるもんだから、親も知らん顔するわけにいかない。『タイム』誌によれば、人口のその層だけを対象にした広告に、年間数十億ドルが費やされているそうです。それをもってないと友だちの輪に入れないと子どもが言うので、親のほうは賛成できない、子どもに良くないと思っていても、買い与えるしかないんですよ。

マイケル


とりあつかい注意

この時期、親が忍耐強く接し、あるがままを受け入れてくれるだけで、子どもにとってははかりしれないほど心強いものです。激変する子どもは、自分の変化に対処しきれなくなることも。そんなときにいちばんいい対処法は、なにも反応しないこと。悩んでいる様子ならひとりで部屋に閉じこもらせてやり、学校で友だちとどんなことがあったか訊ねるのは後回しにしましょう。ただ、本人だけで対処しきれなくなったときにはいつでもサポートできるよう、いろいろな方法を考えておいてください。子どもは感情を暴発させたり不適切なことばを発したりするかもしれませんが、親はそれにいちいち反応してはいけません。頭を冷やす時間を与えてやれば、たいていいつもどおりに戻ります。

思春期初期の子どもは体の変化に過敏で、それが原因で感情的になることがあります。子どもの体の明らかな変化について、あれこれ言うのは避けましょう。罪のないことばでも、子どもは悪意に受けとり、逆上するものです。とくに、身長や体重についてのコメントにひどく悩みます。親類や訪問客に「おや、大きくなったこと」とか「すっかり女の子らしくなったね」と言うなとは注文できませんが、その発言で子どもが不安にならないよう親がフォローすることはできます。大原則は、体の変化についての発言は避けること。ただし「わたしにもあなたみたいに運動神経があったらねぇ。あなたみたいな球技チームの選手になりたかったのよ」など、子どもが喜ぶ発言は例外です。


体の変化が早まっているのはなぜ?

三つの説があります。第一の説は、あなた、そう、親であるみなさんのせいだというもの! 子どもに食べものを与え過ぎているというのです。これまで体の変化の早期化は、食事や栄養の改善のおかげとされてきました。ただし、今の子どもは食間に栄養価の低いジャンク・フードを驚くほど大量に平らげていますが……。第二の説は、農家のせいだというもの。あまりに多くの成長ホルモンが食物連鎖に入りこんでいるためだというのです。いちばん有力そうな第三の説は、地球温暖化のせいだというもの。ティーンエイジャーとトマトに本質的な違いはありません。どちらも栄養をたっぷり与えて暖かくしておけば、早く成長するのが道理です。

もしかしたら研究者にも解明の糸口がつかめていないのかもしれません。だとしたら心配です。思春期が今以上に伸びるかもしれないのですから。子どもはさらに幼くして性徴を迎え、ホルモンが体内で急激に活動するのにともなって起こる自分の心と体の不可思議な変化に対処しなくてはならなくなります。


体と心の変化の意味合い

今や性徴ばかりか、性体験の低年齢化も進み、子どもは性行為とその結果に責任をもつ必要が出てきています。子どもの置かれている状況や起こるかもしれないことを知っておきましょう。

もうひとつ、性徴の早期化にともない、性について関心をもつ年齢も親の世代よりもはるかに低年齢化しています。幼くして性の悩みにもんもんとするのです。

そうしたもろもろの変化の影響で、子どもは感情の起伏が激しくなります。多くを吸収し適応しようとして、混乱するのです。重要なのは、子どもがいきなり付きあいにくい相手になるのがなぜか、その理由を親が知っておくこと。思春期というジェットコースターの難所を通過する間、親は子どもに息をつける「スペース」を与え、忍耐強く接してください。

体の成熟が早期化していることに加え、子どもは内面もむりやりに、とくに雑誌や映画、テレビを通じて、あまりにも性急におとなにさせられています。幼いうちから現実ばなれした恋愛イメージを植えつけられているため、ボーイ/ガールフレンドをつくらなくちゃいけない、と焦ります。自室にカギをかけて閉じこもる子どもが多いのも無理はありません。外の世界は恐ろしいところだからです。

思春期初期の子どもはよく、容姿をからかわれます。毎日のように体が激変しているのですから、容姿は思いつきやすい話題です。ですが、子どもにとって容姿はとてつもない重大事なので、親は十分に配慮しましょう。悪意のないコメントでも、子どもはスカッド・ミサイルの破壊力並の反応を示すことがあります。

体の大きさや体型、見た目に気をとられるあまり、自分の容姿が嫌でたまらなくなってしまう子どももいます。見た目を気に病んで、拒食症などの摂食障害を引き起こすことも。親が手助けしてやれば、子どもは自分の長所に目を向け、自尊心をもてます。達成感を得られる活動をさせれば、自尊心を高め、体の大きさや形にとらわれがちな目をほかへ向けられます。

思春期前後の子どもには、身長のばらつきがでるのが普通。同年齢の子よりも大幅に身長が低かったり高かったりする子どもはからかわれ、成育が遅いとか早いとか言われます。そうした体の成育の遅い早いはときにいじめの対象になりますので、学校のことを話したがらなくなる、学校に行きたがらなくなる、といった子どもの変化を見逃さないようにしましょう。

さらによくないのは、身長の高い子どもはほかの子より早熟だと思われがちなことです。体の成育はかならずしも心の成熟をともないませんから、そうした周囲の先入観は子どもに無用のストレスを強います。子どもがほかの子よりも身長が高い場合、その点に注意してください。子どもはひとりひとり違い、体も心もその子独自のペースで成熟していくのです。


体の中身

忘れられないのは、思春期初期のある少年のカウンセリングをしたときのことです。彼はスポーツにはいっさい参加しようとせず、体育の授業のある日には学校をサボるので、わたしのとこに来させられたんです。内向的で引きこもりの傾向がいよいよ強まったということで。やっとのことで口を開くと、自分は奇形だからだれにも見られたくないとのこと。診断書にはどこにもそんな所見はありませんでしたが……。胸の骨が一本、グロテスクに突きだしているんだと。で、わたしにその問題の骨を見せてくれました。胸は普通そのものでしたが、自分は異常だと思いこんでいて、それを恥じていたんです。きみは正常だよとドクターにお墨付きを出してもらい、その件は落着しました。珍しいことじゃありませんよ、子どもがそういうことを深刻に考えてひどく気に病むことはよくあります。親はたえず気を配っている必要がありますね。

マイケル


女の子の体と心の変化

性徴期には女性ホルモン、エストロゲンの分泌量が増え、身長や筋肉、骨の成長が促され、性器が発育します。一般に男の子よりも女の子のほうが「発育のスパート」が早く始まり、九歳で始まることもあります。また、遅くても十五歳には始まります。

月経が近づくと調子が悪くなることもあります。とくに、多くの子が悩まされる月経前の情緒不安定や倦怠感は、ホルモンのバランスが変わるためです。親はそうした変化に気を配り、その子らしからぬ言動をしてもいちいち見とがめず、ある程度大目に見ましょう。

実年齢よりおとなびて見える子も多いので、不愉快な目や危険な目にあう可能性があります。実年齢が十四歳なのに十九歳や二十歳に見えることで異性の目を引き、自分で対処しきれない事態や身の安全を守れない事態に陥ることがあります。娘の服装には口出ししにくいものですが、細心の気配りが必要です。外出するなと命じたり、その服はよくないと頭ごなしに言うのは、とくに本人が買った服の場合、得策ではありません。怒らせたり、プライドを傷つけたり、関係をこじらせたりしないよう、娘の身を案じていることを伝えるようにします。服装以外のことが心配なのだと伝えることも効き目があります。

ベッキーが「これどうかな、ママ?」。十四歳のベッキーが着ているのは、二十歳(!)に見える胸元のあいた露出度の高い服。ママ「すてきよ、ぐっと年上に見えるわね。ただ、おとなの男の人の目を引くでしょうから、それが心配。あなたが対応に困るんじゃないかしら。男の人に本気でつきまとわれると、それで嫌な思いをすることもあると思うの。あなたがあんまりすてきに見えると、そういう心配があるわよね。どう思う?」


男の子の体と心の変化

性徴期には男性ホルモン、テストステロンの分泌量が激増し、性器や筋肉、身長の発育が促され、声が低くなり、顔にひげがはえます。たいていは十二歳前後で「発育のスパート」が始まりますが、なかには一、二年遅れる子もいます。

声変わりをきまり悪く感じる子もいます。その場合は、知らんぷりするのがいちばんです。ただしたいていは、声変わりを得意がり、むしろ親が気づいてくれることを喜びます。親がしてやれるサポートのひとつは、息子がばつの悪い思いをしている変化は見て見ぬふりをしてやること。スポーツ用プロテクターの装着さえ恥ずかしがることもあります。


「自分はふつう?」。子どもはつねにそう自問しています。これから子どもが思春期に乗りこえなければならないそのほかのハードルについて検証していきますが、子どもがつねにそう自問していることを心に留めておいてください。


旅路をたどる

長い旅もはじめの一歩から始まり―ついで一歩、さらに一歩、また一歩と重ねていくもの。思春期の旅も同じ。一歩ずつ前向きに身のまわりの世界との関わりを深めていくのです。「一歩」を踏みだす手助けをしてやれば、子どもは人生の全体像を組みたてる発見や達成の喜びを味わえ、いずれ最大の難関にも最悪の事態にも立ち向かえるようになります。

旅は幼くして始まります。はじめて挑戦する日が出発日。文字を書く、自転車に乗る、線を引く、ネコを軽くたたく、人と話す、など「学ぶ」だけではなく、身につけるすべての「一歩」が、心に染みつき経験という複雑な土台となり、その積みかさねが人生の枠組みを形成する助けになるのです。親が子どもにしてやれるなにより大切なことは、まずは愛情と信頼とサポートを与えてやれる環境を作り、ついで時間をさいて技術や経験を身につける姿を実際に見せること。それは早ければ早いほど望ましいものです―ただし、いつ始めても遅すぎることはありません。船の舵をとるゆるぎない手のように、うまずたゆまず歩を進めることが人生という道の足場固めになるのです。

もちろん、人生は愉快で楽しいことばかりではありません。弱さや逆境や残酷さに立ちむかうことも大事なレッスン。幼い子どもやティーンエイジャーには、バランスがとれていること、つまり地に足がついていることが不可欠です。子どもたちには、高く舞いあがり―また地上に無事戻ってくる―感覚を楽しむことも、足の下に地面があるという安心感も必要です。親にしてみたら、子どもの人生は子どものもので自分のものではない、という事実を受けいれるのは容易なことではないでしょう。ですが旅に出してやれば、それだけ子どもは自分の人生を楽しめます。驚くべきことに、ほとんどの人、とくに子どもは、本能的に純粋な愛をかぎわけ、相手が自分の世界を破壊しないかぎり、喜んで相手を信頼します。ですからそうした土台があれば、子どもたちは自分から進んで旅に出て人生を探求します。

ダン・ストヤノヴィッチ―二十歳のナターシャと十四歳のタニアの父


思春期初期の子どもがぶつかるハードル

思春期初期の子どもには、同性の友だちと行動をともにして自分が受けいれられるか試そうとする傾向があります。子どもは、次の大きな疑問の答えを探しているのです。

  • 「自分はふつう?」
  • 「自分は仲間に好かれてる?」
  • 「自分は受けいれられてる?」

一般に、思春期初期は小学校を卒業し、中学に進む時期です。そうした環境の変化もあって子どもはこの時期、刺激的で高くそびえる数々のハードルにぶつかります。

この思春期初期は、親にべったりの幼年期から卒業する時期でもあります。思春期の旅路に足を踏みいれると、壮大な神秘が始まります。自然が本能に絶妙な一押しを加えたかのように、子どもは自立への道を歩みだすのです。冬眠から目覚めたクマ、川をさかのぼるサケ、あるいは巣から飛びたつひな鳥にどこか相通ずるところがあります。みなさんが目にしているのは、そんなすばらしい光景なのです!


今、考え中なんだから……

思春期初期の子どもは、抽象的なことを考えられるようになり、考え方がおとなびてきます。あらゆる種類の情報や人に対処し、疑問をもつ能力が発達するのです。みなさんも覚えがありませんか? それまで歩いてきた道の途中で「なぜ?」という疑問が浮かび立ちどまった記憶が。今みなさんの家にいるのは、それまではまったく、あるいはたいして反論せずに受けいれていたありとあらゆる状況ややり方に反論し、ことによれば拒否する力があることに突如として目覚めたひとりの人間なのです。性徴期には複雑なホルモン変化によって脳の構造も少し変わります。変化を前向きに受けいれましょう。それは、子どもが一人前になりつつある印です。

思春期初期は、親にとっても刺激的な時期。なにしろわが子がはじめて、親をおとなの目で見るようになるのです。子どもたちはたいてい、こんな反応をします。「あーあ、うちの親ときたら! あの知的障害者たち、年がら年中人に恥をかかせるし、退屈星からやってきた退屈人間だし、おかげでこっちの人生、地獄だよ!」。すばらしいじゃないですか! 子どもは親を観察し、胸中のつかえを吐きだし、そして巣立っていきます―自分の足で人生の旅路を歩みだし、親とべったりの幼年期と決別するのです。すてきなことです!親が嫌でもそれしか道はありません。


喪失感と不安感に悩む

思春期初期の子どもは、ふたつの感覚に悩まされます。

  • 喪失感
  • 不安感

このふたつの感覚は、人生で最もめまぐるしく変化する時期を迎えた子どもたちひとりひとりの心の奥底にあります。

喪失感はどの子の心にもありますが、自覚しているのは一部の子です。以前は、子どもと緊密な関係を築いている親に間違いはない、と言われていました。が、もはや過去の話! 子どもにきびしい批判の目を浴びせられ、逃げ場がなくなれば親だって今や「キレ」ますし、隠しておきたかったことも明るみに出ます。どのみち親も完璧ではないのです。親が完璧ではないと知ったショックや親離れの過程で、子どもの心の奥深くにある種の喪失感が芽生えます。

その結果、当然ながら、子どもは第二のやっかいな感覚、不安感を覚えます。大半の子どもは用心深く隠しているので、子どもが不安を抱いていることに気づかない親もたくさんいます。精神分析医のフロイトは、すべての不安は未知への不安である、と語っています。思春期の子どもは未知の世界に旅立とうとしているのです。おとなであるわれわれ親は未知への旅を経験済みです。岩だらけの土地を旅したことがあるのです。子どもが不安を覚えるのは当たり前なのですが、子どもはまず不安を口に出しません。しかも、大半の子どもは自分が喪失感はもちろん不安感に悩まされていることに気づいてもいないのです。

すると、どんな影響が出るのでしょう? 寂しさや不安をどうやって表現するでしょう? 怒りや不機嫌によってです。覚えがありませんか? そこで親がしがちな最大の過ちは、怒りという表面的な表現に反応すること。大事なのは、子どもの言動の背景に目を向け、今なにを感じているのか理解することです。子どもは、一晩のうちにモンスターに変わるわけではありません。親もみなかつて悩んだ「自分はふつう?」という最大の問題や疑問と格闘しているだけ。じつのところ、「自分はふつう?」という疑問はどんな年齢のどんな人にとっても恐ろしい命題です。人はいくつになっても、ほかの人と同じでいたい、ほかの人に受けいれられたいという願望から解放されることはありません。とりわけ思春期初期の子どもにとって、集団の一員でいたい、人に好かれたいという願望はほかのなにをおいてもかなえたい重大事です。体の変化と、小学校から中学への環境の変化に順応しようとするこの時期、子どもはこの問題でひどく悩むことがあります。


中学校生活を始める

多くの親は、子どもが中学校生活になじめばピリピリしなくなるだろうと思っています。たしかにプレッシャーは減るでしょう。でもそう簡単にはいきません。中学に入ってしばらくしても、初日と同じ緊張に悩まされる子もいます。機会があるごとに親も学校行事に参加し、子どもの学校と関わりをもちましょう。中学生になった子どもはしっかりしているように見えるかもしれませんが、要求されることが大きくなります。親が関心を示し実際に関わるかどうかで、子どもの人生にとって大事な節目のこの時期が大きく変わってきます。

  • 子どもの学校に本気で関心をもっている姿勢を見せる。中学について所番地以外にも情報を仕入れましょう。中学を選ぶ際、親を疎外するのではなく、親の関わりを歓迎する学校を選ぶようにします。
  • 毎日子どもに質問をし、子どもの話を聞く時間をつくる。今どんなことをしているか説明させましょう。口ごもるようなら、その理由を突きとめます。ただし、子どもは学校から帰ってきたばかりのときはお腹をすかせ疲れていることが多いもの。おやつを食べ、考えをまとめる時間を与えてください。最初にする質問は「今日、学校でなにしたの?」より「今日、どうだった?」のほうがいいでしょう。前者の質問をすると「別に」という答えが返ってくることがあります。
  • 子どもが浮かない顔をしていたり、悩んでいたり、不機嫌だったら? 理由をくわしく訊ねましょう。いじめを受けている兆しかもしれません。学校側はいじめに対してどんな方針をもっているのでしょう?
  • 子どもに友だちがいるか? いなければ、共通の趣味をもつ子どもに出会える活動やスポーツに参加させましょう。
  • 学校の課題が重荷になっていないか? 課題に手を貸してやれるか? 教科についておしゃべりする時間をつくりましょう。「歴史では今どんなことを勉強しているの? 国語でどんな本を読んでるの?」。親も課題図書を読めば、その本について話しあえます。「地理はどんな具合? 体育ではどんな競技をしてるの? 先生ってどんな人? だれがいちばんいい先生? 来週はキャンプに行くの……楽しいでしょうね……キャンプではなにをする予定?」。ビデオをレンタルし、関連するテレビ番組を録画し、新聞記事を切りぬきます。宿題に目を通してあげようか? 手を貸そうか? と申しでてみましょう。
  • 子どもがある教科を苦痛に感じていたら、その教科の担当教師と直接話しあう。校長と話しあうより、担当教師と直接話すほうがいいでしょう。教師は校長がいないほうが自分の意見を言えます。ただし、関係者一同のためにも教師にくってかからないこと。子どもは必要以上に悩んでいるもの。おそらくはその教科でひっかかっている場所があるのです。そのひっかかりをどう克服したらいいか教えてもらいましょう。教師に対してはオープンで気さくに接するのがいちばん。それでもうまく話しあえなければ、校長や理事に相談します。
  • 子どもを誇りに思っていること、学校の成績がどうであれ愛情に変わりはないこと、学校の成績さえよければいい子だとは考えていないことをきちんと伝える。安心すると、子どもは必要以上のストレスから解放され、たいてい成績が上がります。自分がギブアップすると親をがっかりさせることになると悩んでいる子もいます。子どもにとって親の期待は重圧です。子どもが精一杯の努力をしているのに少しも成績が上がらない場合、あるいは子どもがそう考えている場合、悩ませておいてはいけません。学校の勉強でトップクラスにならなくてもかまわない、と子どもを安心させましょう。
  • 子どもが勉強ぎらいの場合や成績がふるわない場合、その子が得意なことや興味をもっていることを伸ばす。学校以外の活動が自己表現の場になることも。子どもはダンスやキック・ボクシング、太極拳やフラワー・アレンジメントに興味があるかもしれません。自治体が運営している教室には、それほど会費が高くないものもたくさんあります。子どもの興味によっては、中古の楽器やスポーツ用品、ミシンなどの手芸用品を買ってもよいでしょう。子どもはちょっと背中を押してやれば、自分の好きな新しい世界に入っていけるもの。達成感を味わえ、待ちどおしいと思える対象が見つかれば、子どもは今よりずっと楽しく暮らせます。気分転換でき、学校の成績がふるわなくてもこの世の終わりと悲観しなくなるはずです。

情熱を発掘する

うちのふたりの子に関して、わたしたち夫婦は子どもがスキルや関心を広げられ、情熱を発掘できるチャンスを与えようと努めてきました。ふたりとも小さい頃から音楽や体操の教室に入ってますが、今も楽しんで続けているのは音楽ですね。今十三歳の娘のジェシカはもう長いことバイオリンをやっているのですが、ほんとうに情熱をもっているのは歌。学校の合唱団とオーストラリア少女合唱団に入ってます。クリスマスの「キャロル・バイ・キャンドルライト」やオーストラリア・フットボール・リーグのシーズン最終戦みたいなイベントに参加して歌うのが大好き。イベントに参加していろいろな人と歌ったのは、あの娘にとってすばらしい体験でした。イベントに参加すると、組織の一員として行動しなくちゃいけませんしね。それに同じ趣味をもってるほかの女の子たちと知りあいになれて、友だちの輪が広がりました。おかげで、もし学校の友だちとぎくしゃくしても、娘にはもうひとつ友だちの輪があります。自尊心を保つのに大きなことですよね。

十一歳の息子のトマスのほうは、本を読むのが大好き、スポーツを観るのも参加するのも―解説や分析もするし、統計も持ちだすくらい―好き、クラシック・ギターも大好き。できれば、息子がティーンエイジャーの十三歳になったときにも、娘と同じように目的をもって楽しく、そういういろいろな趣味を続けてほしいですね。わたしたち夫婦の信念は、子どもには情熱をもてるものが必要ということ。それがあれば才能を伸ばせるし、そのうえで達成感や帰属意識や目的意識を得られますからね。

アン=マリー&マイク・ミネア


思春期初期の子どもをサポートする

思春期初期は、かならずしも最大の反抗期ではありません。ですがこの時期から努力しておくと、その後の苦労がずいぶん軽減します。中学で新生活をスタートするこの時期は、お互いの信頼と尊重をベースにした話しあいで親子のきずなを築く絶好のチャンスです。

親はあの手この手で「あなたはふつうよ」と子どもを安心させましょう。思春期初期の子どもの心と体と頭に起こっている変化は複雑ですが、親の役割は驚くほどシンプルです。子どもに安心感を与えること、子どもが大事な存在であると伝えること、それになにより子どもの話を聞くことです。その際、子どもはおとなにコントロールされることに過敏に反応しますから、刺激しないことばづかいをしましょう。

毎日のように変化する体や心と折りあいをつけるのに、子どもに息をつける「スペース」を与えることは大切です。でもそれは、子どもが自力で折りあいをつけるまで、無視し、ほったらかしておくという意味ではありません。コミュニケーションの窓口はつねに開けておきましょう。子どもの不平不満が聞こえないふりをしたり、不愉快なふるまいを無視する分にはかまいません。大事なのは前向きなコミュニケーションです。


子どもの話を聞いていますか?

子どもの話をよく聞きましょう。子どもが新しい思いつきや意見への親の反応を伺っているときは、話がどんなに理不尽であっても相づちをうち、だまって聞きましょう。笑いとばしてはいけません。親の考えを押しつけたりせず、進んで耳を貸してください。子どもはよくこんな不満をもらします。「うちの親、自分がなんでも知ってると思ってて、子どもの意見に耳を貸さないんだもん」。子どもが親と違う意見をもつようになったことを受けいれ、その意見に耳を貸せば、親のみなさんの心の痛みも、割れる瀬戸物の数もぐんと減ります。親は、あなたの意見は自分とは違う、意見の違いはここだと言うだけでいいのです。前向きな話しあいを続けましょう。あげ足とりをしてはいけません。勝者はいないのです。子どもは親が自分の意見を尊重してくれたことを評価します。親が自分の意見を身を入れて聞いているのか、ただ我慢して聞いているのかの違いを見抜きます。親が本気で意見を言っているのか、無理に調子を合わせているのかも。話にきちんと耳を傾け、子どもの意見を尊重してください。そうすれば、思春期の子どもを相手にしている間に髪の毛が抜けたり正気を失ったりする回数が最小限ですみます。


思春期初期を切りぬけるヒント

  • 新しい学校に入って環境が変化するこの時期には、全面的に子どもに関わる。
  • 体の変化についてコメントしない。
  • 感情の起伏が激しくなり、過敏な反応をするものと心得ておく。
  • 学校に行きたがらないそぶりを見せたら、じっくり話しあう。
  • 自尊心を高められるような興味の対象を見つけさせる。
  • 長所に目を向けさせる。
  • 子どもが親をうっとおしがっても腹を立てない。

いつもいっしょ

うちの両親はいいよ。やたらに厳しくないんだ。いっしょにやってくれる―とうさんは手を借してくれる。とうさん、大工なんだ。いっしょにゴーカートなんかを作ったり、自動車レースを観に行ったりするよ。で、かあさんとはときどき映画を観に行く。かあさんもとうさんもぼくたちと趣味が合うんだ。かあさんなんか、ぼくたち兄弟と同じ映画が好きなんだから。十一歳の弟と十六歳のあにきとだよ。

もしなにかで悩んだら、かあさんととうさんに相談する。ふたりなら安心だから!

ラファエル―十四歳


クランチ・タイム 学校ぎらい

子どもが学校に行きたがらないそぶりを見せています。どう対応したらいいですか?

  • 子どもじみたことはやめ、仕事をするように言う。
  • 学校を中退すると最終的におちこぼれになるとさとし、授業料を払うのにどれほど自分ががんばっているか付け加える。
  • そもそも子どもはたいがい学校嫌いなものなので、子どもの訴えは無視する。
  • 行きたがらない理由を訊ね、どんな解決法があるか話しあう。

子どもじみたことはやめ、仕事をするように言う。

子どもはそんなふうに訴えをはねつけられるのを嫌がります。学校を嫌がっている理由を突きとめてください。思春期はただでさえ難しい時期なのですから、学校とそれなりにつながりをもたせておくのは大事なことです。学校は子どもの生活の大きな部分を占めています。学校でなにが起こっているのか、やさしく慎重に聞き出してください。


学校を中退すると最終的におちこぼれになるとさとし、授業料を払うのにどれほど自分ががんばっているか付け加える。

そんなことを言っても子どもは怒るだけですし、おまけに学校が嫌な理由も話してもらえません。子どもの悩みにはそれなりの理由があるのです。「おちこぼれ」ということばを使うと、優等生になれとプレッシャーをかけることになります。したがって、子どもが自分は親の期待に応えていないと挫折感を覚えている場合には、危険な対応です。


そもそも子どもはたいがい学校嫌いなものなので、子どもの訴えは無視する。

子どもの悩みがどんなことであれ、無視してはいけません! 子どもが学校に行きたがらないのは異常です。いい機会ですからこの際、子どもの考えを聞きましょう。親が子どものことを本気で心配し関心をもっている姿勢を見せれば、大きな見返りがあります。


行きたがらない理由を訊ね、どんな解決法があるか話しあう。

正解! 問題点を探しだし、その解決にできるかぎり手を貸すことが重要です。そうすれば子どもは本来の場所に戻れ、親も子どもの暮らしに関心をもっていることを示せます。ただし、子どもが親の思ってもいなかった進路や仕事を選んだとしても、それまでどおりに関心と愛情を注ぎましょう。親にとっていちばん大事なのは子どもの幸せであることをはっきり伝えてください。


「思春期初期」早わかり

思春期初期とは、

  • 体が激変する。
  • 容姿、体型、発育、性について悩む―「自分はふつう?」
  • 容姿をからかう。
  • 同性の友だちをつくる。
  • 小学校から中学校への移行期。
  • 親べったりの幼年期と決別する。
  • おとなびた考え方をするようになる。


アクセス数 0 (0)
ウォッチ数 0
読み 2.ししゅんきしょきじぶんはふつう?
作成者 hayakawa
作成日時 2008年11月11日 16:02:45
最終更新者 hayakawa
最終更新日時 2008年11月11日 16:04:14
スキーマ (なし)