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書籍名 アルツハイマーガイドブック
見出し 序文

内容

序文


 数年前、友人のひとりに、長期出張のあいだ母親の面倒をみてくれないかと頼まれました。彼女の母親はアルツハイマー患者で、だれかが一日何時間かようすを見る必要があったのです。わたしはこの病気について本では知っていましたが、実際に患者に会うのははじめてでした。どんなことが起きるか見当もつきませんでした。


 第一回めの訪問は、みじめな結果に終わりました。友人の母親は愛想よく迎えてくれたものの、わたしがだれで、なんのために来たのかがわからず、絶えず不安そうにしていました。いくら試みても会話が成り立たず、わたしは完璧に打ちのめされました。次の訪問では、なんとしてもコミュニケーションを成立させたくて、行きつけの画廊に連れていきました。すると、そこはとても気に入ってくれました。

以降、あちこちの画廊を一緒に訪れては、もらった広告を切り抜いてコラージュを作りました。じきにひとりでも作業ができるようになり、彼女が切ったり貼ったりしているあいだ、わたしたちはさまざまな話をしました。人生や愛や楽しい経験、それから悲しい経験についてもいくつか。聞かされる話はちぐはぐでつじつまの合わないこともよくありましたが、やがて彼女の人生が見えてきました。わたしたちは心から友だちになりました。家族もわたしの手伝いに来はじめ、やがてひとつの集まりができました。みんなで歌を歌い、絵を描き、お話を作り、ありとあらゆることについて話をしました。ほかにも、一緒に図書館や美術館を訪れたり、映画を観にいったり、川べでピクニックをしたり。


 わたしはアルツハイマー病に関する本を手当たりしだいに読みましたが、日常の問題に役立つ情報はごくわずかだったので、自分で解決策を探るしかありませんでした。アルツハイマー病、さらに言えば認知症(訳注


 本書の「認知症」の項を参照。知的、精神的な能力が失われる症状。以前は痴呆と呼ばれていた)の患者は、〝病気〟というより、ただ精神状態が変化しているだけで、以前と同じく豊かな生活を送ることも可能です。じきにわかったことですが、知りあった患者のだれもが、どんどん混乱していく世界に住んでいながら、自分のことをまったく正常だと考えていました。


 わたしはその〝正常〟を尊重し、ひとりひとりの関心事やニーズに応えてきました。そして、ともに歩みながら日々を創造しています。目標は、たとえ他人にはつまらなく思えようと、充足した豊かな経験を積むこと。なかでもとくに有意義なのは、ただ話をするだけの時間です。みんなが聞き役を必要としているので、わたしはもっぱら耳を傾けています。接する人々は、経歴も興味の対象も性格もじつにさまざまで、認知症の度合もまちまちです。おかげで、相手の病状の重さに関わりなく効果が得られる話しかた、接しかたがあることを知りました。

 

 わたしは長年にわたって、このやりかたを患者の家族や介護施設のスタッフに伝え、きわめて満足な結果を得てきました。そして、そろそろ読者のみなさんにもお伝えするべきだと考えました。本書は、わたし自身の経験に加えて、介護者のだれもが必ず遭遇する状況をまとめたものです。


 ジョン・ベッカー医学博士が、お忙しいなか時間を割いて本書の内容をチェックし、足りない情報をつけ加え、医学的な記述を精査してくださいました。高齢者、とくに認知症やアルツハイマーを患う高齢者の特別なニーズについて、博士は驚くほど深い知識を持っておられます。

本書が、読者のみなさまのお役に立ちますように。


――ジュッテ・ロクヴィグ


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読み じょぶん
作成者 openknow
作成日時 2011年4月26日 18:44:12
最終更新者 openknow
最終更新日時 2011年4月26日 18:48:42
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